自治体DXで目指すもの

令和3年9月にデジタル庁が設置され、さらに令和3年12月にはデジタル社会の実現に向けた重点計画が閣議決定されました。こうした動きの中で、弊社でも自治体DX(Digital Transformation)に関するご相談を受けたり、ご提案をしたりする機会が増えています。自治体DXとはどのようなものか、整理してみたいと思います。

自治体DX推進計画

令和2年12月に自治体DX推進計画が策定されました。自治体全体として足並みを揃えて情報システムの標準化・共通化などデジタル社会構築に向けた各施策を進めていくために、自治体が取り組むべき事項が示されています。

自治体DX推進計画で示されている重点取組事項は次のとおりです。

○ 自治体の情報システムの標準化・共通化
○ マイナンバーカードの普及促進
○ 行政手続のオンライン化
○ AI・RPAの利用推進
○ テレワークの推進
○ セキュリティ対策の徹底

また、自治体DXの取組とあわせて取り組むべき事項として、次の2つが示されています。

○ 地域社会のデジタル化
○ デジタルデバイド対策

また、令和3年7月には総務省から自治体DX推進手順書も示されており、この手順書を参考にDXを進めていくことができます。

 
 

そもそもDXとは

自治体DXを考えるにあたって、そもそもDXとはどういうものなのかを復習しておきましょう。デジタル技術・情報技術によって、ビジネスや産業、社会の仕組みに構造的な変化(変革)をもたらすこととされています。これまでの情報化では、既存のプロセスや仕組みを大きく変えないまま、情報通信技術による効率化を目指すことが多かったと思いますが、DXではプロセスや仕組みそのものを変えていきます。どのような制度や仕組みがよいかをあらかじめデザインし、その実現のための情報技術を用いるアプローチも重要ですが、それだけでなく、デジタル化をしてみたら今までできなかったことができるようになったり、よりよい仕組みになったりするということも出てくることを期待し、いろいろ試すというアプローチも必要になってくると思います。

「自治体DX」で何を目指すか

DXがどのようなものかをふまえて、自治体DXについて考えてみます。

自治体DX推進計画の重点取組項目は、市役所や町役場の中の情報化の延長として考えられるものが多い印象ですが、まずは地域差が出ないようにデジタル化を進め、変革を起こす土台を整備するということだと思われます。重点取組項目については着実に、しっかり取り組むことが大切でしょう。

こうした最新技術の導入だけにとどまらず、最新技術を使って何を実現するかをもっと大切にすべきと考えます。自治体DX推進計画の「自治体DXの取組とあわせて取り組むべき事項」の2つ、地域社会のデジタル化、デジタルデバイド対策を自治体の状況にあわせて検討し、重点取組項目と関連付けて進めていくことが重要です。

【地域社会のデジタル化】

人口減少が進むなかで、地域の暮らしや自治体のサービスの質を落とさないようにするためには、情報通信技術をうまく使っていくことが必要になってきます。また、安心・安全の確保、地理的な制約を受けない働き方など、デジタル化により実現できることを拡げていくことも大切です。

効率化などの手段としてのデジタル化に加えて、デジタル化によって仕組みを変えていくことも含めて、地域に合ったDXの取り組みを進めていくべきと考えます。デジタルツールの使い方を理解したり、デジタル化による利便性を理解したりすることを通じて地域社会のデジタル化を進めていくことになります。

【デジタルデバイド対策】

自治体DXの推進においては、デジタル技術・情報技術を前提にすることで取り残される人が出てしまうことがないようにすることが求められます。デジタル化による変革を進めつつ、デジタル化に対応できない人に対して代替手段を設定するなどの配慮が必要になります。DXで恩恵を受けるのは、地域で暮らす人、地域で働く人であるべきです。デジタルツールの導入だけにならないようにしていくことが大切でしょう。

 
 

自治体DX推進計画策定支援

自治体DXの推進にあたっては、情報通信技術・デジタル技術の技術論にならないよう、一つ上の視点で自治体DXを考えていくことが大切と考えます。

弊社の自治体DX推進計画策定支援では、まずはデジタル化で実現したいこと、目指すべき姿を関係者で共有することを大切にします。地域の医療や交通、教育、産業などが、5~10年後にどうなっているか、どうなっていてほしいかを具体化していきます。また、将来像を実現する過程において、情報通信技術をどのように活用することができるか、情報化・デジタル化により、どのようなワクワクする取り組みができるかなどについて、関係者の納得感のある計画をまとめていきます。

また、デジタルデバイド対策を含め、DX推進計画を地域で暮らす人、地域で働く人にも知ってもらうことも大切です。情報発信や関係者の意見の反映においても、地域特性にあった方法で進めていけるよう、様々な提案をさせていただきます。

自治体DX推進計画の策定とあわせて、将来像実現のステップを考えてみませんか。

ゼロカーボン実現の極意

 
 

取締役 地域政策部 部長
山田 将巳 
yamada masami

 

ゼロカーボンに向けた取組の現状

国際的な潮流に遅れを取りましたが、2020年10月、菅首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い、2021年9月末時点で、464の自治体が2050年ゼロカーボンシティを表明しています。現状として、環境省の補助事業により、国内各地で再エネを最大限に導入する計画策定が進んでおり、2030年までに脱炭素を実現する先行地域に認定されれば、ハード導入支援も約束されます。

 これまで私たちも数多くの計画策定に携わってきましたが、過去の取組を振り返り、評価をするたびに、計画に位置付けられた施策を推進することの難しさを痛感します。

そんな中、欧州や国内の一部の地域では先手を打って取組を進めています。なぜ進められるのでしょうか?計画策定後のアクションに何が違うのでしょうか?

ゼロカーボンシティ実現に必要となる対策のイメージ図

資料)『地方公共団体における長期の脱炭素シナリオ作成方法とその実現方策に係る参考資料Ver.1.0』(環境省)

洋の東西を問わない手法論

弊社の事業領域は広く、メインフィールドは中国地方で、数多くの中山間地域をめぐり地域振興に向けた伴走支援を行っています。そして時には、海外展開支援事業でインドへと、東奔西走しています。

地方創生を謳い、活性化に取り組むのはどこも同じですが、活動が進む地域には共通した特徴があります。それは「徹底的なコミュニケーション」です。私たちは、コミュニケーションが活発な地域ほど、取組の推進度が高い、という経験則を持っています。

弊社では、地域で行うワークショップの本質を学ぶために外部講師を招き社内研修を行っていますが、そんな中でも学びがあります。「コミュニケーションを増やせば関係性が良くなり、関係性が良くなると売上が伸びる。」これは事業者向けの言葉ですが、地域に当てはめれば「売上が伸びる」の部分は「取組が進む」と置き換えることができます。

実際に矢継ぎ早にアクションを起こし、継続している中山間地域で地元の方たちに話を聞くと、例えば、公民館エリアで取組を進めたい場合、そのエリア内の自治会を練り歩き、丁寧に説明されるそうです。この丁寧さが「自分ごと化」する人を増やし、活動をドライブさせます。また、会議を繰り返し、時間をかけて次のビジョンをつくりあげる、といった良好な循環を生み出します。

オーストリアの小さな村でも、ゼロカーボンに向けた取組は、「省エネ」「再エネ導入」「オフセット」(図1)と、日本と何ら変わらないことばかりですが、それらを実行に移す覚悟を村内で共有し、公的組織や中間支援組織ともやはり徹底的に議論を重ね、アクションを起こし継続しています。

ダイジに据えるもの

トップダウンを悪者扱いするつもりはありませんが、自分たちで考え、侃々諤々と議論を戦わせたアイデアには愛着も沸き、そう簡単に諦めることもなくなります。JICA・ODA事業でも、日本の優れた設備を導入したものの、インドの人たちが使いこなせず、放置されるケースが散見されます。このため、現地の人たちが機器を使いこなせるよう、現地の人たちと何度も意見交換を交わし、自分たちのモノにしてもらう工夫が求められています。

 設備導入は、いくらでもスピード感を持って進められます。しかし、それらを使いこなしてこその「ゼロカーボンの実現」。課内、庁内、連携自治体と、地域住民、事業者とコミュニケーション。ここに時間をかけることが「ゼロカーボン実現の極意」だと考えています。

共に創る福祉・地域共生社会

地域・児童・高齢者・障がい者福祉の近況

近年の福祉行政においては、「地域共生社会の実現」が大きなキーワードとしてあがると思います。地域共生社会の実現は、ニッポン一億総活躍プランにおいて定義され、「『縦割り』から丸ごとへの転換」「『我が事』・『丸ごと』の地域づくりを育む仕組みへの転換」を進めていくこととされています。

児童福祉(母子保健)においては、子ども・子育て新制度によるサービス拡充、母子保健法改正により規定された子育て世代包括支援センターによる妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援の提供が進められている所です。

高齢者福祉においては、第6期の制度改正により総合事業が創設され、多様な主体の参画によるサービスの充実、第7期は地域包括ケアシステムの強化が図られるとともに、介護医療院、共生型サービスが創設されています。

障がい者福祉においては、障害者総合支援法改正により、自立・就労・障がい児への支援拡充が図られ、第4期における基本指針で示された地域生活支援拠点等も整備が進められ、障がい者の生活を地域全体で支えるサービス提供体制の構築が図られている所です。

 
 

これからの福祉行政

 これからも、地域共生社会の実現のための地域のつながりを再構築、包括的なサービス提供体制の拡充が国全体で進められると考えられます。

 地域のつながりを再構築するという点において、地域のつながりが強かったのは何時かという明確な定義は難しいですが、再構築する上の相違点は、今は公的支援が充実しているという事です。

 以前は、公的支援がないため、自分たちで助け合うという状況であったのが、現在は、多くが何らかのサービスで支援できる状況にあり、地域だけで課題を解決していくという方向性に持っていくことは困難です。

地域のつながりを再構築しつつ、サービスの拡充を図るには、「地域のつながりの再構築」に合わせて「地域と行政」「行政内部」のつながりの強化が一層求められると考えられます。

 
 

業務にあたって大切にしている3つの視点

■国の制度『には従う』⇒『を活用する』

 私は、福祉行政に5年間携わり、窓口・議会対応・新規事業など、様々な経験をしてきました。

その中で大切だと思っていたことは、住民サービス向上のために、国の制度を如何に活用するか、という視点です。これは、都市部と地方においての生活環境の違いがあるように、地域の実情に合わせたサービス提供を行う必要があるという視点とも言えます。

私たちは、福祉行政を支援する立場として、ルールとして守るべき所は然りですが、それぞれの自治体において、どのようにしたら国の制度を有効活用できるのか。という視点を持ってお手伝い致します。

 
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■『できる』を見つける

 福祉行政においては、目まぐるしく制度改正があり、制度への対応だけでも相当な労力となります。その中で、地域のつながりを高めるための仕組みづくりも並行する必要があります。現状を大きく変えて新たな仕組みを構築することは難しく、少しずつできる所からつくることが現実的であり有効な手段です。

 地域のつながりを高めるために、住民から意見を聞く機会としてアンケートやヒアリングは一般的な手法として用いられます。

 これらは課題を見つけるために実施することが多いですが、私たちは課題を明らかにするとともに、小さいことでも地域が『できる』ことを見つけるという視点を持ってお手伝い致します。地域や行政で『できる』を少しずつ増やして、地域共生社会の実現へとつなげていきます。

 
 

 

■内部を理解した上で提案する

 行政の組織においては、各部署の役割があり、その役割を果たしてこそ福祉サービスが成立している面がありつつ、これがいわゆる縦割りと言われる所ともなります。縦割りを丸ごとに変えるのは、部署によっての上下関係はなく、どこかが先導していくというやり方は難しいという実情があると思います。

 その中でも包括的支援を提供していくためには、福祉以外の部署も含めた連携が欠かせません。

私たちは、各部署における、目的や対象者が近い事業を把握し、どのようにしたら連携できるのかという視点をもってお手伝い致します。

これは、行政で働いていた私の経験を活かすことにより、実効性のある提案ができる、私たちならではの強みです。

関係人口が拓く地域の可能性

高まる「関係人口」への期待

進み続ける少子高齢化・人口減少の中、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材への期待が高まっています。国の掲げる戦略では、関係人口創出は、東京一極集中の是正や地方移住の裾野拡大に向けた施策として位置づけられています。エブリプランでは、地域の持続可能性を高める施策として、邑南町において、関係人口との協働による地域課題解決のモデルづくりに取り組んでいます。

 
レポート①メイン:古民家をリノベーションしたゲストハウス「ミッケ」2.jpg
 

邑南町モデルの試行と実践

邑南町羽須美地域では、2015年頃から、過疎が進む地域を応援しようと、町外に住む若者が農作業やイベント運営を手伝うようになりました。その後、地域を走るJR三江線の廃線が決まると、住民を応援する鉄道ファンが地域に足繁く通うようになり、廃線後の鉄道資産の活用に向けた機運が高まりつつありました。

このような動きを発展させるため、邑南町では、2018年度、「地域イベント“INAKAイルミ”の継続」と「三江線の鉄道資産の活用」を地域課題のモデルケースとして、都市部および地域での協働プログラムを企画・実施し、関係人口創出のプロセスを試行・検証しました。

2019年度には、空き家改修の現場をフィールドとしたDIY実践講座「おおなんDIY木の学校」を開催し、都市部住民のDIYへの関心を入り口に、空き家リノベーションの担い手を募る仕掛けを試行しました。

 
レポート①サブ:INAKAイルミの準備2.jpg
 

価値変換と共感の仕掛けづくり

例えば、「おおなんDIY木の学校」は、地域側から見ると「空き家改修の現場」かもしれませんが、DIYer(DIY愛好家)から見ると「DIYの技能習得と実践の場」となります。関係人口を地域の力として取り組んでいくためには、このように解決したい「課題」を関わる人たちにとっての「価値」に変換する仕掛けが重要だと考えています。

加えて、住民自身の言葉で地域への思いを発信し、相互理解を深め、関わる人たちの地域への共感や愛着を育むことで、地域への再訪動機が高まることが分かりました。相互の関係を継続・深化させる上では、地域に対する共感を育むプロセスも欠かせません。

モデルから仕組みへ

羽須美地域での試行結果をもとに、邑南町では、関係人口を創出するような持続型・生産型の新しい観光の実現に向けて「観光やめます 関係はじめます」をキャッチフレーズに掲げた観光ビジョンを策定しました。そして2020年度には、地域の課題解決を目指す個人や団体を対象に、関係人口創出のノウハウを習得・実践する講座を開催し、地域の担い手育成の仕組みづくりに取り組みました。

邑南町の挑戦に関わる中で、地域が抱える課題を地域外に開き、幅広い人材を発掘・育成することは、人口減少社会の新たな可能性をひらくと確信しました。

 
レポート①差し替え:トロッコに手を振る地元の人たち2.jpg
 

おわりに

私たちは、島根県という課題の先進地から課題解決の先進モデルを生み出し、中国地方に、全国に、そして世界に発信していきたいと考えています。

今後も、地域に根差すコンサルタントとして、多様な地域の課題に寄り添い、前向きなチャレンジが生まれる環境づくりをお手伝いさせていただければと思います。

市民とともに展開する森林バイオマスエネルギー事業

1.第8期を終えた(同)グリーンパワーうんなん

 雲南市における森林整備を進め、森林資源をエネルギーとして利用し、地域経済循環と環境保全に貢献することを目的に、平成24年6月に※合同会社グリーンパワーうんなん(以下GPUと表記)を設立して第8期を終えました。

GPUの事業は、①雲南市内の森林から市民参加と林業事業体が搬出してくれる林地残材を購入し、乾燥した上でチップに加工して市内のチップボイラーに供給する「熱供給事業」、②チップボイラーのメンテナンスを行う「保守事業」、③雲南市からの「委託事業」で構成されます。第8期においては、売上高49,700千円となり1,600千円の利益を上げることができました。第1期から第6期までは赤字決算でしたが、第7期、第8期と黒字決算を達成でき、事業としての安定が得られてきました。

※  グリーンパワーうんなん:(株)田部、飯石森林組合、大原森林組合、山陰丸和林業(株)、(株)中澤建設、森下建設(株)、(株)エブリプランの7社で構成しています。

 
①里山整備・未利用材を伐採

①里山整備・未利用材を伐採

③ストックサードで未利用材を蓄積・乾燥

③ストックサードで未利用材を蓄積・乾燥

②未利用材を軽トラで搬出

②未利用材を軽トラで搬出

④乾燥した材をチップにして供給

④乾燥した材をチップにして供給

 

2.熱供給事業の実態について

 燃料となるチップの原料となる木材の受入は、市民のみなさんから約1,000トン、林業事業体から約2,000トンで合計3,000トンとなります。(図1参照。受入段階での木材の含水率は45%程度)そして蓄積している木材から1,200トン(含水率25~30%)を加工して1,120トンのチップとして供給しています。(図2参照)また、チップにしない広葉樹等は原木や薪の形で450トン程度を販売しています。チップは市内にある6基のチップボイラーに供給しています。GPUでは、チップボイラーのサイロのチップ量を管理しながら、山陰丸和林業加茂事業所と連絡をとり、供給計画を立てて安定供給できるように努力しています。

 
図1:チップ用木材の搬出量(トン)

図1:チップ用木材の搬出量(トン)

 
 
図2:チップ供給量(湿潤重量:トン)

図2:チップ供給量(湿潤重量:トン)

図3:市民登録者数と「里山券」利用枚数

図3:市民登録者数と「里山券」利用枚数

 

3.市民参加による木材搬出活動について

 GPUには、自らの山を中心に森林整備を行っておられる市民が約350人登録しています。そのうち約120人が、GPUが管理するストックヤードに木材を搬出してくれています。市民には、木材1トンあたり6,000円(現金2,000円、地域通貨「里山券」4,000円分)をお渡ししています。(図3参照)

 平成25年度からこの取組みを実施していますが、搬出量の最大は平成27年の1,223トンであり、そこから年々減少し令和元年度は954トンとなりました。(図1参照)これは、登録者の高齢化、伐出する木の作業性の低下、登録者の山林の整備終了などの要因によるものです。今後、安定した原木量を確保するためには、登録者を増やす、グループでの活動を増やす、林業技術のレベルを上げる、作業道整備を進める、重機の利用を進めるなどの対策をとる必要があると考えています。

 林業技術のレベルアップのために、GPUでは林業技術講習会を行っています。実践的に行う講習として、グループに対する伐倒・搬出講習が有効です。ロープやPCウィンチ、軽架線キットなどを用いることで、木材の搬出作業は格段に効率が良くなります。効率が良くなることは、森林整備活動へのモチベーションアップにつながり、木材の搬出量の増加につながると考えています。

 

4.これからの会社運営について

 GPUの経営は第8期を終えて安定してきました。しかし、実態としては2名の雇用に留まっており雇用の循環が図れない状況です。会社が持続していくためには雇用の循環が必要であり、経営の独立化が必要です。そのためには、事業規模を拡大する必要があります。チップ供給事業を拡大しようとすると、原木の確保や人員の増加が必要になり、安定した経営を不安定にすることになりかねません。薪や木を原料にした各種の製品も販売していますが、事業拡大に大きく寄与するものではありません。

 そこで、GPUでは雲南市の協力を得て、電力小売り事業への参入を検討しています。単に電気を売る事業とするのではなく、森林バイオマスエネルギーのさらなる活用として、バイオマス発電につなげることでエネルギー供給事業体としての役割を果たし、持続的な会社運営を実現し、雲南市の経済が活性化するように目指していきたいと考えています。

 また、この取組みが全国の森林保全活動の手本となるように頑張っていきます。

公共施設の今後のあり方検討

〇公共施設の老朽化がますます深刻化

平成26年度頃から、地方公共団体においては厳しい財政状況が続く中で、人口減少等により公共施設等の利用需要が変化していくことが予想されました。そのため、早急に老朽化が進む公共施設等の全体の状況を把握し、長期的な視点をもって、更新・統廃合・長寿命化などを計画的に行うことにより、財政負担を軽減・平準化するとともに、公共施設等の最適な配置を実現することが必要になりました。このような背景をもとに、平成31年3月31日現在で、99.8%にあたる1,785団体で公共施設等総合管理計画が策定され、公共施設等を総合的かつ計画的に管理を推進に取組んでいます。

現在は、その計画に基づく個別施設計画を策定し、具体的な取組を進めていく段階に入ってきていますが、なかなか個別の取組みが進んでいないのが実情です。

この間も施設の老朽化が進行し、維持管理費が増大しつつあり、早急に個別の取扱い方針を定め対処することが急務になっています。

 
リニューアル前の清嵐荘

リニューアル前の清嵐荘

リニューアルされた清嵐荘

リニューアルされた清嵐荘

 

〇公共施設等のあり方検討が課題

道路などのインフラ施設や学校施設等においては個別計画が策定され、長寿命化等の対策が進みつつある市町村もありますが、一方でなかなか進まないのが観光関連施設や交流施設です。また、廃止された小学校や公民館等の利活用が課題になっている市町村もあります。

現在、観光関連施設等の多くは、指定管理者によって管理・運営されていますが、施設の老朽化などにより維持修繕費が増大する他、利用の低迷で採算性が悪化し、指定管理料も増大する傾向があります。さらに、市町村合併以前に建設された施設が多く、老朽化に加え、重複している機能や施設も少なくない状況であり、今後のあり方を決めなければならない時期に来ています。

一方で、これらの施設があることで、外貨を稼いだり、消費を促したりと地域への経済波及や雇用を生み出している一面もあります。

こうした背景のもとで、エブリプランにおいても近年観光関連施設の今後のあり方について検討する機会が増えてきています。

 
検討委員会であり方が検討されている「いわみ温泉霧の湯」・「香遊館」

検討委員会であり方が検討されている「いわみ温泉霧の湯」・「香遊館」

 

〇あり方検討のプロセス

①将来の維持修繕費の想定
 まず必要なのが将来の維持修繕費の想定です。各施設において劣化や老朽化の状態を調べる健全度調査を行い、維持修繕費がどの程度かかるか想定を行います。長く利用してきている施設ではこれまでの更新履歴から推測する方法もあります。 

②経営状況の分析
 各施設の収益と維持管理費のバランスなど経営状況の分析が必要です。観光関連施設は複合施設の場合があるので、施設全体での経営分析に加え部門ごとの経営分析も行い、不採算部門の洗い出しと改善の可能性(採算性の向上)を検討する必要があります。 

③将来の需要見込みや経済波及効果の分析
 その施設があることで、現在どの程度の経済波及効果があるかを想定するとともに、需要見込みに基づく将来の経済波及効果や雇用効果の算定を行います。 

④総合的な検討
 最後に、将来発生する経費と経済波及効果などを比較、施設の更新・統廃合・長寿命化などの今後のあり方を検討し、地方公共団体にとって最善の方法を選択していくことが重要となります。合併以前からの施設で機能が重複し、非効率な状態になっている地域では、関連施設を一体的に調査、検討することが望ましいと考えます。

課題をお抱えの市町村の方は、エブリプランにお気軽にご相談ください。

山陰におけるインバウンド拡大の取り組み

イノベーション推進部 研究員
村井 友利乃 Yurino MURAI

1.地方への外国人観光客の増加

2019年の訪日外客数は過去最高の3,188万人となり、増加を続けています。近年、訪日旅行での訪問地域は認知度の高い都市部から、まだ知られていない魅力のある地方部へ広がっています。しかし、これまで外国人観光客の受け入れが少なかった地方では、インバウンド向けにつくられた観光コンテンツがまだまだ少なく、受け入れ体制も十分に整っていない現状があります。

2.山陰でのインバウンドコンテンツ開発

 エブリプランでは、中国経済産業局の「島根半島・宍道湖中海ジオパークにおけるインバウンド誘客を核としたサイクリングツーリズムによる消費拡大事業」で、欧米豪出身のサイクリスト等を招聘した2泊3日のモニターツアーを実施し、該当エリアでのモデルルート開発に取り組みました。

このエリアには出雲大社をはじめとする歴史や文化の観光資源が多数あり、風光明媚な景色の中を、ジオパークの地形や自然を体感しながらサイクリングできる環境がありますが、外国人からの認知度は低く、簡単にこのエリアを楽しむことのできる仕組みも整っていませんでした。今回、地域のキープレーヤーを巻き込みモデルルートを開発し、商品造成につなげることができ、今後の送客も見込まれます。

 欧米豪富裕層マーケットでは、訪日旅行10日間で100万円を超えるサイクリング旅行商品が多数設定されています。地域へのインバウンド効果という意味では、量だけではなく質も重要です。今後、質の高い観光の提供が可能となり、より地域に関心を持っていただける方に訪問いただくことができれば、よい循環が期待できます。

3.山陰でのインバウンド人材育成の取り組み

また、山陰地域では、山陰インバウンド機構がインバウンド人材の育成プログラムを2017年から3年連続で実施しており、エブリプランとしても2019年度事業の企画・運営に関わりました。インバウンドの基礎情報の提供や、インバウンドビジネスの立ち上げのノウハウを提供など受講生のレベルに合わせた複数のプログラムを実施しました。こうした取り組みにより地域の人材が育っていくことで、地域の観光の質も上がっていきます。

4.観光地域づくり

インバウンドから、地域が享受できるものはたくさんあります。経済的な利益だけではなく、来訪者の地域への理解・関心を深め、地域との関りを生み出し、外からの視点で見られることで地域の人は土地の魅力を再認識でき、地域への愛着も生み出します。エブリプランはインバウンド関連業務を通じて地域の可能性を引き出すことを目指します。

江の川流域エリアにおけるインバウンド向けアドベンチャー・ツーリズム開発プロジェクト

1.高まるインバウンド観光客への期待

東京オリンピックが開催される2020年に向け、我が国では、訪日外国人観光客4000万人、観光消費額8兆円の達成という野心的な目標を掲げ、各種取り組みを進めています。我々の事業フィールドである島根県・広島県等の中山間地域においても、これらの動きを新たなビジネスチャンスととらえ、その取り込みに挑戦することが期待されています。

このような中、広島県から島根県を流れる江の川流域エリアを中心に、インバウンド観光の取り込みに向けた新たな旅行商品開発とその受入体制整備を進めています。

 
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2.江の川流域エリアにおける取り組み

 我々の活動の発端は、平成30年3月31日のJR三江線の廃線です。JR三江線は島根県江津市と広島県三次市を結び、江の川の流れに沿って走っています。モータリゼーションの進展による鉄道離れ、沿線地域の急激な人口減少等による需要減少等、廃線の原因は様々ですが、JR三江線の廃線を地域活力の衰退に向けたマイナスの現象とするのはなく、地域が新たに立ち上がるチャンスへと転換し、地域の活力づくりにつなげるべく、地域内外の関係者とともに取組を進めてきました。

この中で、欧米豪を中心に成長を見せる「アドベンチャー・ツーリズム」に着目し、江の川流域エリアがもつ自然環境、景観、風土、温かな人との触れ合いなどを活かした新たな観光商品づくりを進めています。ここでは、神話の世界を今に伝える「出雲」と世界的平和都市「広島」を結ぶルート上に江の川流域エリアを位置付け、2つの日本を代表する観光地とのつながりの中で、当圏域の魅力を活かすコンテンツづくり、ストーリーづくりに取り組んでいます。

 
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3.ファムトリップを通じた商品のブラッシュアップと発信

 本年度は、「中国地方等の魅力発信による消費拡大事業」に採択され、ターゲットとする欧米の旅行会社のバイヤーを招聘した5泊7日のファムトリップを実施し、旅行商品の磨き上げと、ガイド等の地域側の受入体制の整備に取り組んでいます。「何もない田舎」と言われるエリアにおいても、点在する資源を掘り起こし、知的好奇心の高い外国人観光客の目線で磨き、統一的なストーリーをもって提供することで、付加価値の高い旅行サービスへつなげる可能性が充分にあります。

4.おわりに

 私たちエブリプランは、島根県という地方都市から地域課題解決のビジネスモデルづくりを発信することを目指し、ローカル、グローバルの2方向へ事業を展開しています。今後成長が期待されるインバウンド分野において果たすべく役割は大きいものと自覚しています。現在の取り組みを発展させながら、観光客、事業者、地域が利益を享受する仕組みづくりを進めたいと思います。

 
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結局、人。「大人の学び場」が秘める大いなる可能性 ~広島県ひと夢未来塾の運営業務を通じて~

●はじめに

 弊社は、平成27年度より、広島県中山間地域振興課が実施する「ひろしま『ひと・夢』未来塾(以下、「未来塾」といいます)」の企画・運営業務を担っています。本稿では、弊社が2年間にわたって担当させていただいた未来塾の運営を通して見えてきた課題、成果を整理し、「学びの場づくり」を通じた地域振興のあり方についての可能性を展望するものです。

●未来塾の概要

 「未来塾」は、広島県中山間地域振興計画に基づき、広島県の中山間地域が持つ価値へ共感・共鳴する人の輪づくりを行うことを目的に、塾形式の「学びの場」を提供することを通じて、中山間地域が抱える課題の解決を担う「人」づくりを行うことを目指すものです。

 「未来塾」は、「はじめの一歩コース」「プロフェッショナルコース」の2コースにより構成され、前者は「地域活動に関する自分なりの一歩を踏み出すこと」を、後者は「既に組織された組織・団体の経営課題解決」を目標として設定しました。

 両コースは、全6回のカリキュラムで構成し、座学、現地研修を通じて、各受講生自身による「アクションプラン」の作成と実行を促す内容となっています。

 
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●自分なりのアクションにつなげるカリキュラム

 百聞は一見にしかずという言葉があります。これは、たくさんのことを聞くよりも、実際に見ることのほうが何倍の価値があるという意味ですが、その故事は、「百見は一考にしかず、百考は一行にしかず・・」に続くと聞きます。つまり、聞いたり、見たり、考えたりするだけでなく、実際に行動することの重要さを説くものです。私たちは、未来塾の企画に際し、この考えを大切にし、受講による「自分なりのアクション」を促すカリキュラムづくりに留意しました。具体的には、講座実施時における次回までの行動目標の設定と実践状況の振り返り、講座と講座の開催期間中における各受講生への個別のフォローの実施、既に活動を実践する卒塾生との交流機会づくりなどを盛り込みました。

 これにより、多くの受講生に対し、座学・現地視察によるインプットのみならず、自分なりのアウトプットを促すことができました。

 
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●受講生の意識レベルをそろえる工夫

 第一期「未来塾」の開催に関する反省の一つに、受講生の意識レベル、受講目的が様々で、一体感づくりが必ずしも充分にできかなったことがあげられます。このため、第二期「未来塾」の開催に際しては、各コースの狙い、目標を踏まえ、各コースが対象とする人材像をできるだけ明確にし、カリキュラムの設計、募集活動等を実施しました。この結果、それぞれのコースに見合った受講生を確保することができ、スムースな講座運営が図られました。

 未来塾は、個々人のスキルアップと同時に、一定期間、学びの場を共有する受講生同士のつながりを生み出し、新たな活力を得ることも目的とします。多様性を確保するとともに、意識レベルの近い仲間を集めることで、塾終了後に続く人のつながりづくりに効果を得ることができました。

 
宿泊合宿

宿泊合宿

塾生によるプラン発表

塾生によるプラン発表

 

●やる気・本気を育む大人の学びの場の可能性

 二年間にわたり事務局として「未来塾」に関わらせていただく中で、同年代の大人が真剣に悩み、自分なりの答えを見出し、自らの殻を越える変化のタイミングに立ち合わせていただきました。それは、受講生自身が自らが選んだ未来へのスタートを切った瞬間であり、感動すら覚えるものでした。

 卒塾生の中からは、写真コンテスト、鹿肉を利用した商品開発など卒塾式で発表したプランの実践例が見られます。また、卒塾生同士の交流会が継続され、新たな仲間を巻き込みながら、ネットワークを拡大しています。

●おわりに

「中山間地域の課題解決を担う人材を育成する。」

 字面だけ見ると、きわめて硬い内容ですが、そこに込められた想いは、結局、課題解決を担うのは「人」であり、人の可能性を信じ、引き出すことの重要性だと思います。

 私たちは、未来塾の運営を通して、①志を同じにする仲間、②良質な学びの機会、③塾生の活動を支える体制が整った「大人の学びの場」は、多くの可能性を引き出し、新たなアクションを生み出すことを体感しました。今後も、様々な分野で「良質な学びの場」づくりを働きかけていくことで地域の可能性を引き出していきたいと考えています。

 
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オフィス紹介

仕事風景

私たち社員は、白を基調とした一面ガラス張りのオフィスで緑に囲まれながら日々働いています。

社内は、ゆったりとしたBGMと共にどこかカフェに来たような不思議と安心感があります。

“ color ”を増やそうとあちらこちらに花を置いてみたりと、“ 仕事がしやすい職場 ”に近づく為、皆でアイデアを出しながら模索中です。

自慢のテラスに出れば、一面緑の景色を味わえたり、美味しい山陰の空気が沢山吸えたり、夏には昼休憩時に竹を使って流しそうめんを行ったりと様々な用途で楽しんでいます。

田舎すぎず、都会すぎない此処だからこそ、可能な事が沢山あるのです。

 
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