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Report 01 「企業版ふるさと納税」による官民共創のまちづくり

企業版ふるさと納税制度について

 企業版ふるさと納税(正式名称:地方創生応援税制)は、新たな民間資金の流れを巻き起こし、地方創生の取組を深化させることを目的として、平成28年度に創設された制度です。

 本制度は、国が認定した「地域再生計画」に位置付けられる自治体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、法人関係税から税額控除する仕組みです。通常の寄附を行った場合、損金算入による税軽減効果(寄附額の約3割)を得られますが、企業版ふるさと納税では、これに加えて寄附額の最大6割が税額控除され、実質的な企業負担が約1割にまで圧縮されます。

企業版ふるさと納税による税額控除のスキーム(出典:内閣府地方創生推進事務局HP)

 令和3年度の寄附実績については次のとおりです。ここ数年で相当程度認知され、制度活用が急速に拡がっている状況です。

 寄附を行った企業数:3,098(前年度比 約1.9倍)

 寄附金額:約225.7億円(同 約2.1倍)

 寄附件数:4,922件(同 約2.2倍)

 寄附を受領した自治体数:956(同 約1.8倍)

 現在、多くの自治体にとって、政策的な経費に財源を投じる余裕が少ない状況にあります。例えば、地方財政の弾力性を判断する指標の一つである経常収支比率※は、全国平均で93%を超えています。厳しい財政状況の中にあって、いかにして地域の課題解決に取り組むかが求められています。この点において、企業版ふるさと納税は魅力的な財源の一つといえます。

※経常収支比率=人件費、扶助費、公債費などの経常的な経費に、地方税、地方交付税などの経常的な収入がどの程度充当されているかを示す比率。比率が高いほど財政構造の硬直化が進んでいることを表す。

経常収支比率の推移(出典:総務省「令和4年版地方財政白書」)

よりよい地方創生プロジェクトとするためのポイント

 本制度は、企業の寄附によって地方創生を実現する一つの有意義な手段といえますが、その一方で、事業主体である行政、事業資金の出し手である企業、それぞれの視点を理解する必要があると考えています。自治体の担当者からは「頂いた寄附で、行政が実施したい事業ができるのか(企業の意向に左右されるのではないか)」、企業の担当者からは「地域貢献や社会貢献に関心を持っており、寄附を前向きに検討しているが、自社にとっての寄附の意義や効果をステークホルダーに十分説明できない」といったご意見をお聞きすることもあります。

 有意義な制度がありながら、こうしたすれ違いによって機会損失が生じ、制度が十分活用されていないとすれば、地域にとっても、我が国全体にとっても「もったいない」状態です。

 こうした状態を解消するためには、双方の視点を理解しつつ、コミュニケーションを重ねる中で、「官民がともに創るプロジェクトに昇華させていく」という視点が重要ではないかと考えています。そのためのプロセスを丁寧に進め、よりよい地方創生プロジェクトを創り上げていきませんか、というのが弊社の提案です。

 弊社では現在、他の企業とも連携を取りつつ、企業版ふるさと納税を活用した官民共創プロジェクトのプロトタイプ作りに取り組んでいます。行政と企業の双方にネットワークを持つ弊社の強みを活かし、特色ある取組となるよう、お手伝いをさせていただきます。

 

Report 02「未来の地域を支える人づくり」

U18キラボシプロジェクト事例紹介

探求学習で得られる効果とは

 「地方」の抱える重要な課題の一つに、人口減少があります。そもそも地方には多くの課題があり、人口減少が進むに連れて、県内の多くの産業や企業の担い手不足、人材不足など地方の抱える課題も増えていっているのではないでしょうか。島根県では「教育」「定住・移住」のように、様々な観点でこの課題解決に取り組んでいます。これまで私たちも各自治体、高等学校の施策に携わってきましたが、未来をより良くしていくための施策であるため結果が見えづらく、日々試行錯誤しながら多様な事業を推進しています。

 近年、基礎学力の向上だけでなく、地域の「ヒト・モノ・コト」に触れながら人間力を伸ばしていく探究学習が進んできている中で、島根県は全国的に見ても特にこの探究学習支援の強化を推進しています。

探究学習では、

①知識や技能の習得

②思考力や判断力、表現力の育成

③学びに向かう力、人間性の涵養

の3つを目標として推進されていますが、実際に私たちが事業を進める中で感じる効果の本質は、

①地域への愛着の醸成

②将来地域で活動するイメージ付け

③挑戦意欲の向上

が挙げられます。

「ひとづくり」による人材還流促進

 現在弊社では、松江市と松江商工会議所と共に、高校生や大学生が実現したい世界や笑顔にしたい人のために、5万円を原資に自ら事業・ビジネスを企画・実践するプログラムである「キラボシプロジェクト」を推進しています。「食品ロスを減らすためにコミュニティカフェを作る」、「犬猫の殺処分問題を解決するために譲渡会を開く」のように、それぞれの実現したいことに向けて25組のプロジェクトが日々取り組みを進めています。現在の地域を担う大人と未来の地域を担う若者が共に取り組むことで、人財育成と共に地域の活性化に繋がり、「将来自分も島根県に貢献したい」「島根県の魅力を自分の力で広げていきたい」と話す学生も出てきています。また、ネクストステージという卒業直前の高校生を対象としたインターンシップ企画では、県外進学する前に島根県の企業でインターンシップを行い、普段出会えない大人と出会うことで、自らの活動に対する意欲を高めるとともに、進学後も島根県と関わり続けるきっかけ作りを行っています。

 このような取組に参加した高校生や大学生、大人たちがコミュニティとして繋がっていき、県内外問わずどこにいても「島根」をテーマにつながり続ける土壌ができてきています。このように「人づくり」の取組はスキルアップだけでなく、地域と人との繋がりを構築していくことができます。

 また、それぞれのステップ単位での取組も大事ですが、産学官金が連携して、地域と共創する教育から人材還流までの「流れ」を作っていくことが大切であり、これは「地方」と呼ばれる場所でこそ実現できると考えます。これからも私たちは、各地域で多様な取組を推進する中で地域の可能性を引き出していき、眠っている地域課題の解決に尽力していきたいと考えています。

 

EVERY-man 仕事に誇りと責任を持つこと

これまでの歩み

 飯南町で生まれ育ち、益田市と山口県で学生時代を送ってきました。

 今年で、エブリプランに入社して4年目になります。

 入社当初から地域の第一線で業務に携わらせていただき、様々な経験を積んできました。挙げていけばきりがないのですが、特に印象に残っている業務をいくつか紹介します。

高校魅力化業務(令和2年)

 松江東高校でコンソーシアムマネージャーとして高校魅力化の推進に向けた組織づくり、ステークホルダーの巻き込み、コンソーシアムの運営を行いました。当時の校長先生からは、組織を前進させるために必要なリーダーシップや仕事の進め方など、本当に多くのことを教わりました。現在に続く貴重な人脈を築けたことも大きな収穫です。

高校生と大人の対話の場をコーディネート

吉賀町総合戦略策定業務(令和3年)

 島根県吉賀町の総合戦略策定を支援しました。企画書の作成から業務の遂行、成果品の納品まで初めて担当し、吉賀町らしい「子供」を中心に据えた総合戦略を策定することができました。

 吉賀町は地元の益田市に近く、いろいろなご縁を感じながら仕事ができたことも印象に残っています。

仕事に対する向き合い方の変化

 エブリプランに入社した当初、自分にとって仕事は自己実現の場であり、「何か、かっこいいことしたいな」と漠然と考えていました。

 しかし年月を重ね、エブリプランが果たしている社会的な意義、存在意義がわかってきたことで、自分自身の仕事に対する向き合い方も変わってきました。自分の仕事を通じて、微力ながら社会を良くすることに貢献するという視点も持って、業務に取り組もうと思います。

今後の目標

 仕事を通じて、そのまちの住民にとっての「希望の燈火」をともせるような人材になりたいです。そのために、これからも技術力のたゆまぬ研鑽を続けていくとともに、明るく前向きな性格を武器にして、誰よりも仕事を楽しんでいきたいと思います。