Report 01「スポーツの力を活用したまちづくり」

国の動き

 国では、1961年に制定されたスポーツ振興法に代わり、2011年にスポーツ基本法が制定されました。スポーツ基本法の考えを具体化し、その方向性を示す指針としての「スポーツ基本計画」(第3期、2022年~)では、共生社会の実現や多様な主体によるスポーツ参画の促進、スポーツによる地方創生・まちづくり、デジタル技術を活用(DX)した新たなスポーツ機会の創出などが取組として示されています。

 「スポーツ基本計画」ではスポーツを、“その活動を通じて、他の分野にも効果を波及させ、様々な社会課題を解決するなど社会活性化等に寄与するもの”として捉えています。この活動を促進・支援する組織として、地域スポーツコミッション(SC)が位置付けられ、地域SCによるスポーツを通じた地域振興の推進が期待されています。

スポーツ推進計画が目指す地域振興

 当社では、2023年度に尾道市と三次市の2自治体の推進計画策定に携わりました。これらの計画は、スポーツ基本法に基づく計画で、ともに前計画の計画期間満了に伴うものです。地域SCを中心にスポーツの持つ力をまちづくりに活用しようという考え方は共通していますが、それぞれにそのまちの特徴があります。例えば、“スポーツの定義”です。尾道市においては、「意識的・継続的に行う様々な身体活動」としており、囲碁などの思考的な活動もスポーツの一部と捉えています。一方、三次市では、「みる・する・ささえ、育てる身体的な活動」としています。身体的活動という表現は同じですが、思考的活動がスポーツとして成熟していないという判断からこのような活動は含めないこととしました。このほかにも、これまでの活動経緯や、活動から得られる課題など、その地域特有のスポーツ環境があります。

 私たちは、国や県の考え方を参酌していても、このような地域の特徴を踏まえた計画づくりを行っています。

動き始めた地域SCの事例

 島根県松江市では、「スポーツによって地域の多様な団体をつなぐ基盤(プラットフォーム)」としての松江スポーツコミッションが2025年3月に設立されました。

 当社はその基本計画の策定業務を支援いたしました。

 地域の多様な団体が一体となれる松江らしい取組を準備委員会にて検討し、コミッションの重要な役割は次の2つに定まりました。

①企画・調整事業(交流ミーティングの開催)

②大会・合宿の誘致・開催支援事業(ワンストップ窓口機能)

設立総会に続く第1回交流ミーティングでは、地域の多様な団体(スポーツ団体、観光業者、宿泊業者等)が出席され、異業種との交流を深め今後の活動につながる良い機会となりました。

 

Report 02「立地適正化計画の策定」

立地適正化計画制度の創設

 国内の都市における今後のまちづくりは、人口の減少と高齢化を背景として、高齢者や子育て世代にとって、安心できる健康で快適な生活環境を実現すること、財政面及び経済面において持続可能な都市経営を可能とすることが大きな課題です。こうした中で医療・福祉施設、商業施設や住居等がまとまって立地し、高齢者をはじめとする住民が公共交通によりこれらの生活利便施設等にアクセスできるなど、福祉や交通なども含めて都市全体の構造を見直し、『コンパクト・プラス・ネットワーク』の考えで進めていくことが重要とされています。

 この考えの実現やまちづくりの課題に対応していくため、都市再生特別措置法が改正され、行政と住民や民間事業者が一体となったコンパクトなまちづくりを促進するため、立地適正化計画制度が創設されました。

コンパクト・プラス・ネットワークのイメージ図 国土交通省資料を基に作成

国内・島根県における策定状況

 立地適正化計画の対象区域は都市計画区域内であるため、都市計画区域を指定している都市が計画策定をすることが可能です。令和6年12月31日時点で、国内における立地適正化計画について具体的な取組を行っている都市は891都市であり、計画を策定・公表しているのは599都市となっています。(国土交通省HP公表資料より)

 島根県内で都市計画区域を指定しているのは13都市ですが、令和7年4月1日時点で立地適正化計画を策定・公表しているのは8都市です。このうち令和6年度の川本町の計画策定を含め、4都市の計画策定支援に携わりました。将来にわたり持続可能な都市を実現するため、居住や都市機能の誘導、公共交通の充実を目指し、「住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるまちづくり」を基本目標に、中心拠点やスポーツ交流拠点、広域交流拠点などに区分した将来都市構造を検討しました。

地方都市での計画策定のポイント

 地方の都市では、人口減少の進行によって既にコンパクトな都市が形成されていることもあり、立地適正化計画の策定にあたって、策定する都市に合わせた『コンパクト・プラス・ネットワーク』の考え方を検討していく必要があります。

 そのため、総合計画等の上位計画から読み取れる今後の方針や都市の各種基礎情報(人口動向や都市機能、災害リスク)を読み取り、持続可能で安全な都市となるように将来像を“再設計”していく計画です。

 また国土交通省が策定する都市計画制度の適切な運用を図るため、市町村が都市計画を立案・変更・運用する際の基本的な考え方や留意点を示した「都市計画運用指針」は、多様な価値観や社会の変化に対応するため毎年改正され、あわせて立地適正化計画作成の手引きも改訂されています。都市計画のトレンドにも対応しながら、各都市に適した計画を策定する必要があると考えます。

 持続可能な都市の“かたち”の形成に向けて、一緒に考えていきたいと思います。